『2050年の世界 英「エコノミスト」誌は予測する』(文藝春秋、2012年)がベストセラーとなり、話題になっている。テーマは「メガチェンジ―驚くほどの速さで展開する大規模な変化」だ。予測の得意な同誌は、1962年にまとめた特集「驚くべき日本(Consider Japan)」で、日本が米国に次ぐ世界2位の経済大国に発展する上り坂を見事に予言したが、今回は逆に日本が下り坂を転げ落ちる姿を描き出している。
2050年、日本は人口の半分が52歳以上となり、世界史上類を見ない超高齢社会となる。GDPは全世界の1.9%(2010年は5.8%)に落ち込み、1人当たりGDP(購買力平価ベース)は米国や韓国の半分程度に沈む。プレゼンスを失い、先進国から脱落する局面を迎える。
専門家の予測はサルにも劣る
しかし、同誌が敢えて強調するとおり、専門家の予測は当たらない。筆者も、学生時代に『成長の限界―ローマ・クラブ「人類の危機」レポート』(ドネラ H.メドウズ著、ダイヤモンド社、1972年)を読み込み、地球資源の枯渇を憂慮するレポートを書いたが、その後世界各地で有望な油田が見つかり、今やシェールガスの時代だ。『専門家の予測はサルにも劣る』(ダン・ガードナー著、飛鳥新社、2012年)というのも、決して誇張とは言えないだろう。
予測が当たらない理由の一つは、人間が対策を講じることを捨象しているからでもある。マスコミが競って報じ人々の記憶に残りやすい悲観的な予測の数々は、「このまま手をこまねいていれば」という前提で、警鐘を鳴らしているにすぎない場合が多い。日本が迎える下り坂も一本道ではなく、踊り場や上り坂につながる分かれ道がまだ残っているはずだ。