文部科学省の統計によれば、2012年春に大学を卒業した学生のうち「就職も進学もしなかった」人は全体の15.5%、約8万7000人に及ぶ。改善されつつあるとはいえ、1割を超える学生が進路を決められずにいるのが、日本の「就活」の現状だ。
そんななか静かに話題を呼んでいるのが、坂本光司・法政大教授の近著『小さくてもいちばんの会社』(講談社、1400円)だ。「何らかの分野で『わが国でいちばん』のセールスポイントをもっている」計64の企業を紹介している。
小さくても「いちばんの会社」を見つけよう
たとえば、北海道帯広市の六花亭製菓の「いちばん」は、全従業員が23年連続で「有休消化率100%」を記録している点だ。
しかも同社では有休取得が通常業務への負担にならないよう、消化率向上に取り組むとともに、社員・パートの増員や作業効率の見直し、設備投資なども進め、「有休をとるために残業が増える」本末転倒を防いでいる。社員数は約1300人。「社員一人ひとりが心身共に健康でなければ、おいしいお菓子はつくれません」(小田豊社長)という同社に、坂本教授は拍手を惜しまない。
ほかにも同著には、「年間休日がいちばん多い会社」「顧客からのサンキューレターがいちばん多い会社」「いちばん障がい者が働いている会社」などの「いちばんの会社」が紹介されている。
坂本教授は同著を通じ、一部の大企業や業界に固執する就活生や転職希望者に、規模やブランドにとらわれない「モノサシ」を持つよう呼びかける。
大学生協から大口の注文があるなど学生のほか、「経営のヒントが得られる」とビジネスパーソンからも読まれているという。2012年7月に刊行された。