毎年の夏ぐらいは、日本の歴史のなかでも、国として深刻な「失敗」である第二次世界大戦の歴史を、繰り返し検証・自省することが、現在、政府にいるものとしての、せめてもの責務ではないかと思っている。数百万人の国民を戦死させるなどし、ずるずると戦争を継続し、国家の存亡の淵にまで立ち至ったのであった。
今年の夏は4年に1回やってくるオリンピックの夏でもあった。ロンドンでのオリンピック大会は、今回で3度目だ。これに加え、第13回大会としてオリンピックの歴史に記録されている1944年もロンドンで行われる予定であった。行われなかった理由は、第二次大戦だ。1948年のロンドン大会には敗戦国日本は出場できなかった。第二次大戦は、オリンピックの歴史にも、当然ではあるが、大きな刻印を残している。
東京裁判と公文書保存の重要性
『「東京裁判」を読む』(半藤一利・保阪正康・井上亮 日経ビジネス人文庫 2012年)は、2009年に出された同名の本の文庫版である。第二次大戦の日本の戦争指導者を裁いた東京裁判については、厳しい批判もあるが、裁判には様々な資料が証拠として提出され、貴重な歴史の資料となった。
第二次大戦に造詣の深い半藤・保阪両氏が、取材実績豊富な日経新聞編集委員の井上氏と、国立公文書館で整理・公開されたその資料を読み込んだ。なお、残念なことであるが、日本軍は、ポツダム宣言受諾後、多くの公文書を焼却した。そのため、東京裁判では被告が立証に苦労し非常に不利な立場に立たされたという。公文書の保存の重要性をこのような観点からも改めて痛感する。
また、東日本大震災を契機に、日本の組織論の古典である、『失敗の本質 日本軍の組織的研究』(戸部良一、野中郁次郎ほか著 中公文庫=1991年=、ダイヤモンド社=1984年=)が再び注目されている。最近の日本の公共セクターのほか民間企業までもが元気を失っているのは、新たな環境変化に対応するための学習能力、自己革新能力がうまく働いていないためと洞察できる。