浅草に行こう――なんてよくある特集だが、単純にそう言われても、
「浅草といっても、見るのは雷門ぐらいでしょ? 今さら……」
「東京からだと近すぎて、旅行って感じがしないんだよね」
と思ってしまう人も結構いるかもしれない。
しかし、そんなあなた、特に首都圏在住の人にあえてお勧めしたいのが「浅草"一泊"旅行」だ。なぜか。その魅力の真髄を知るため、「泊まってこそわかる浅草の魅力」を掲げ、2012年8月にオープンしたばかりの「ザ・ゲートホテル雷門」を訪ねた。
ホテルスタッフ一人ひとりが浅草歩き
雷門から歩くこと1分、エントランスからエレベーターでロビーに向かうと、そこはいきなり13階、浅草の街並みを見下ろすガラス張りの空間が出現する。川を挟んですぐ目の前には、新名所・東京スカイツリーもそびえたつ。
「お客様に一度、『日常』から離れてもらうための仕掛けです。しかしここからの眺めもいいですが、最上階・14階のテラスはもっと素晴らしいですよ」
思わず見入る記者にそう語るのは、同ホテルの総支配人・宇野敬介さんだ。宇野さんの案内で階段を上ると、そこには視界300度の屋外テラスが。スカイツリーはもちろん、浅草寺や仲見世も一望できる。「地元の方も『こんな景色見たことがない』と仰います。私の一押しの場所です」と宇野さんは微笑む。
そんな眺望に恵まれたザ・ゲートホテル雷門が大きな売りにしているのが「浅草コンシェルジュ」。スタッフ一人ひとりが浅草について熟知し、宿泊客の求めに応じて適切な情報を提供する――というのが、そのコンセプトだ。
そのためにスタッフは日ごろから自ら浅草の街を歩き、ガイドブックだけでは知ることができない、より深い浅草の魅力を探ることに努めている。
「『おいしいウナギのお店知らない?』――そんな質問に、『あそこのお店がいいですが、店主がガンコ親父なので、食事中は喋ったらだめですよ』なんてところまでお話しします。お客様もそういった知識があれば、違った目で、より浅草を楽しめる――そんな仕事を、コンシェルジュとして果たしたい」
目指すのは、地域と密接な関係を持ち、人々を街へ送り出す「浅草ショールーム」の役割だ。「私どもは浅草では新入りに過ぎません。お客様をホテルに囲い込むのではなく、地域全体がうるおう形になれば」と宇野さんは語る。
実は「泊まる」人が少ない浅草
日本有数の観光地・浅草だが、意外にも「泊まり」の客が少ないことに頭を悩ませている。台東区によると、浅草への推定平均滞在時間は2時間30分(2010年)に過ぎない。浅草寺を見て、一通り歩いて、それで満足――という人が多いのだ。
しかし宇野さんは、泊まりがけだからこそわかる浅草の良さがあると力を込める。
「泊まりがけで来て、ゆっくり食事をしながら歩くことでゆとりが生まれ、普段気づかないような風景に出合えるはず。たとえば街角の小さな『ほこら』や、料亭の脇の珍しい置物、素晴らしい手ぬぐい屋さん――観光地の影に隠れたそんな『深い』浅草を発見してもらいたい」
特に、今さら浅草なんて、と「心理的な距離」を持つ都会人にこそ、たまにはめまぐるしい日常から離れ、浅草コンシェルジュの案内で「浅草一泊旅行」を楽しんでほしいと宇野さんは言う。
「浅草の『朝飯』なんて、泊まらないと絶対に体験できないわけですから。朝からホッピー通りで焼酎飲みながら酔っ払っているおじさん、なんて光景も」