異質の自伝に見る狂気と冷静
ほかには、『立川談志自伝 狂気ありて』(亜紀書房)がおもしろい。東京新聞で「落語は噺(はなし)そのものより落語家を聴くもの」という詩人・八木忠栄さんが、異質の自伝と評している。
異質なのは、死を直視した際どい語り、なりふりかまわない遺言に近い性格の内容。死の二年前から一年前まで書き継がれた。「立川談志の想い出という名の未練を書き残しておく」と結んでいるからすごい。
晩年の高座では「精神と肉体の分離」を言い、「いつ死んでもいい」と語っていたそうだ。「狂気と恐るべき冷静さが有機的に混じり合っている」と評者は拍手を惜しまない。
記事は「もう一冊」として、『立川談志の正体』(快楽亭ブラック著、彩流社)を薦める。入門と破門を繰り返した弟子が師の人物と落語を語る。
(ジャーナリスト 高橋俊一)