領土、領海問題は厄介だ。ナショナリズムだけで物事は解決しないが、竹島や尖閣諸島、北方領土に対する日本の対処の仕方は、今のままでいいのだろうか。国境問題を考える手引きを紹介したい。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」 (https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。
竹島の棚上げはかった「先人の知恵」
『竹島密約』「解決せざるをもって、解決したとみなす」。竹島問題をめぐり日本と韓国との間で、こんな密約が交わされていた。日韓国交正常化のために、領土紛争を棚上げするというもので、日韓基本条約が結ばれる5か月前、1965年1月のことだ。草思社からの『竹島密約』(著・ロー・ダニエル、1785円)は、日韓の歴代政権がどのようにこの密約交渉を進めたのか、文献と関係者へのインタビューを通してその全貌を明らかにした力作だ。
密約から半世紀近く、今回の李明博大統領の竹島上陸により、「解決せざる問題」は、やはり解決していなかったことが改めて明らかになった。ソウルに生まれ、日米の大学で学んだ経験のある著者は「先人の『知恵』をいかにして受け継ぐか」と問いかける。竹島問題の政治的背景を知る上で貴重な1冊だ。
「国境」と幕末のサムライたち
『国境の島を発見した日本人の物語 教科書が教えない領土問題』日本はまわりを海に囲まれているせいか、日本人はふだんから国境をあまり意識してこなかった。しかし、今回の竹島や尖閣諸島の問題で、国境の島の重要さを改めて突き付けられた。祥伝社からの『国境の島を発見した日本人の物語 教科書が教えない領土問題』(編著・藤岡信勝と自由主義史観研究会、1470円)は、竹島、樺太、北方領土・千島列島、小笠原諸島、南鳥島、沖ノ鳥島、尖閣諸島の国境の7つの「島」を取り上げ、いつ、だれが発見したのか、そして、いかなる経過をたどり日本の領土となったのかを人物を通して分かり易く紹介する。
小笠原諸島を取り戻した幕末のサムライたち、絶海の孤島、南鳥島を開拓した「冒険家」、アホウドリと古賀辰四郎と尖閣諸島……興味深い物語があった。
無人島めぐる国家間の争いの底流
『驚いた! 知らなかった 日本国境の新事実』著者の山田吉彦・東海大学海洋学部教授は、海洋問題の専門家で日本の離島をくまなく調査し、国境をめぐる歴史的な経緯や現在の状況に詳しい。その知見が買われ、尖閣諸島や竹島問題の解説者として今やテレビのワイドショーですっかりおなじみになった。実業之日本社のじっぴコンパクト新書『驚いた! 知らなかった 日本国境の新事実』(著・山田吉彦、800円)は、そんな山田教授の体験に基づく最近の国境事情と国境についてのエピソードを集めたものだ。
そもそも、日本に無人島はいくつあるのか。なぜ、無人島をめぐり国家間の争いが生じるのか。小さな無人島といえども、国の排他的経済水域を守るという重要な役割を担っているのだ。面白く読めて、国境問題に強くなる1冊だ。