「親がいつかは、自分より先に逝ってしまう」―― 一般的に言えることだが、あまり考えたくない、という人がほとんどではないだろうか。牛窪恵さんの『男女1100人の「キズナ系 親孝行、始めました。」~平成親子の"つながり"術』(河出書房新社、1470円)は、いつかはお別れしなくてはいけない親への「親孝行」をテーマにした一冊だ。
キズナ系親孝行とは
20代から40代の男女1100人におこなった親孝行についての調査から、「ママに料理を作ってもらう」「父親にお金を出してもらう」のを親孝行と考える人がいることが浮かび上がった。このように「心でつながる術として『あえて親に甘える』」など、従来と違ってバリエーションに富む親孝行の形を、牛窪さんは「キズナ系 親孝行」と呼び、本書のタイトルに採用した。
「お金、時間、ぎこち(ない)」という親孝行の「3つのない」を払拭するヒントや、100以上にわたる親孝行グッズとサービス、微妙な関係の親とのエピソードなどを解説する、盛りだくさんの内容だ。調査結果のほか、インタビューやフェイスブックページ「親孝行ってそうだったんだ!会議」に寄せられた声をもとにしており、なかなか話題にし辛い「介護」や「最期をどう準備するか」といった問題も取り上げる。
「親孝行にはタイムリミットがある」
牛窪さんはマーケティングライター、世代・トレンド評論家として活躍、積水ハウスと共同で起こした研究会「これからの家族を考える会」の代表も2004年から務める。
自身もかつては「親孝行?大事だけど、いまはまだ考えなくてもいいよね」と思っていたと明かす。しかし実父が重篤な病を患ったり、経済産業省の「ライフエンディングプロジェクト」メンバーに選ばれたり、そして何よりも2011年の東日本大震災で、自身の抱えるスタッフが一時的に親と離れ離れになったりしたことを機に、「改めてみんなで親孝行を考えたい」と動き出したそうだ。
そんな牛窪さんは「悲しいかな、親孝行にはタイムリミットがある」「大切なのは、"いま"、その(ありがとう!という)声をあげること」と、本の終わりで指摘する。
帰省中の人もそうでない人も、「キズナ系親孝行」にチャレンジしてみては――。
2012年8月21日、発売した。