「特攻」「戦犯逃亡」あらためて問う「なぜ」 文学作品で読む戦争の不条理

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米軍捕虜を処刑した戦犯はなぜ逃亡したか

『遠い日の戦争』
『遠い日の戦争』

『遠い日の戦争』

   福岡の西部軍司令部の防空情報主任、清原琢也中尉は終戦の詔勅の下った1945年8月15日、米兵捕虜を処刑した。無差別空襲で家族を失った多くの日本人に成り代わってその思いを遂げたと思っていたが、敗戦により価値観は一変、戦争犯罪の容疑者として追われる立場となり、逃亡を決意する。

   新潮文庫の『遠い日の戦争』(著・吉村昭、515円)は、吉村作品に多く見られる逃亡小説の趣で、ストーリーはスリリングに展開するが、重要なのは、清原がなぜ逃げようとしたのかという点だ。そこには戦争犯罪とは何か、さらには東京裁判とは何か、という問いかけが込められている。また、著者特有の綿密な取材と史実の検証によって、戦後の価値観転換の混乱ぶりが見事に描き出されている。

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