戦争終結に苦悩する昭和天皇
『昭和天皇 第六部 聖断』
文藝春秋の『昭和天皇 第六部 聖断』(著・福田和也、1890円)は、昭和天皇とその生きた時代を描く著者のライフワークの第6部。昭和16年の真珠湾攻撃から20年の終戦までを扱う。緒戦こそ快進撃を続けたが、ミッドウェー海戦を機に戦局は悪化の一途をたどる。連合艦隊司令長官山本五十六の戦死、サイパン陥落、東京大空襲、沖縄戦、広島・長崎への原爆投下……戦争終結に向けて苦悩する天皇。
自らの退位も視野に入れ軍部の説得に当たった過程が様々な資料によって明らかになってきたが、著者は文芸評論家としてその内面を鮮やかに描き出す。日本にとって、日本人にとって、あの戦争は何であったのか。夏休み中に一読をすすめたい1冊だ。