すぐに「なんでなの!」と攻撃的になり、相手を非難して言い負かすのが常でした――かつてバラエティ番組でよく見かけた「毒舌キャラ」の女優、杉田かおるさんの「攻撃」ぶりが発揮されたのは、TVカメラの前だけというわけではなかったようだ。
著書『この私が変われた理由』(アスコム、1365円)で、杉田さんは当時の自分の状態について、「恥ずかしいです」と謙虚に振り返っている。「魔王」とも呼ばれたあの毒舌ぶりは、どこに消えてしまったのか……
少しずつはっきりしてきた「幸せの輪郭」とは
書名にもある通り、杉田さんは、かつての自分――誰も信じることができない心の闇や恨みの心を抱えていた――から「変われた」。人生を変えるきっかけや「気づき」は、「意外に身近なところにある」と自身の経験を綴っている。
7歳から「天才子役」ともてはやされた杉田さんは、芸能界を生き抜く中で、金銭面で人から裏切られたり多額の借金を負ったりしたこともあった。「スピード婚からスピード離婚」も経験し、「波瀾万丈の人生」と評されることも多い。しかし、杉田さんは今、「人生で初めてと言えるほど、穏やかな気持ちで毎日を過ごして」いる。
人生が変わるきっかけは、2009年にあったテレビ番組のダイエット企画だ。企画が進む中で、家族の助けもありオーガニック(有機栽培)野菜と出会った。そのおいしさに目覚め、野菜作りにも興味を持ち、女優の仕事をセーブして「自然農」の農業生活を送るようにもなった。
さらに「自然農」を通した人との出会いや、タイ・ブータンへの旅を体験する中で、それまでの人生で抱えてきた「ドロドロの重荷」を下ろしていくことを覚え、「幸せの輪郭」が少しずつはっきりしてきたという。食習慣を変えることで体調が良くなっていった経緯も紹介している。
子役時代から「感謝を知らずに生きてきた」杉田さんは45歳を過ぎた今、
「過去の自分を支えてくれた人、今の自分と関わっているすべての人に心からの感謝の気持ちが芽生えてきています」
という心境にたどり着いている。
杉田さんについて、少し前の「毒舌キャラ」のイメージをまだ持っている人なら、その変わりように驚いてしまう書きぶりだ。しかし、本書を読めば、なぜ杉田さんの心境が現在のように変化していったのかが自然に理解できるほど、具体的なエピソードがふんだんに紹介されている。2012年6月、刊行された。