終盤にさしかかったロンドン・オリンピック。その裏側で、サムスンがオリンピック委員会に、アスリートたちの他社製ヘッドフォンの使用禁止を求めたことが話題になっている。
当然、アスリートたちは反発しているわけだが、そもそも、「スポーツの祭典」であるオリンピックではアスリートたちが主役のはずだ。なぜ、持ち物に口を出せるほど、一企業がからんでくるのか――そんな素朴な疑問を解決する一助になりそうなのが、小川勝著『オリンピックと商業主義』(集英社、777円)だ。
「今のオリンピックは、本当に『アスリートのため』に行なわれているのか」。
「五輪マークを宣伝に使えるのはどんな企業? いくらくらい払ってるの?」
「テレビ局は、どうしてオリンピック中継になると、タレントを起用したりして必死に宣伝するの?」
「世界中の選手たちの交通費や滞在費は、どこから出ているの?」
といった、オリンピックと「カネ」にまつわる数々の疑問に、長らくオリンピック取材をおこなってきたスポーツライターの著者が、現代史におけるオリンピックの変遷をたどりながらこたえる。
ウンチクを語るにとどまらず、私たちが感動したり失望したりする大イベントが、現在のような姿になった最大の要素が「カネ」だったという事実を、豊富な資料に基づいて検証した一冊だ。
「もうひとつのオリンピック史」を浮き彫りにした著者は、最後に読者へこう問いかける。
「今のオリンピックは、本当に『アスリートのため』に行なわれているのか」
2012年6月15日、発売された。