夫の存在が「苛立ち」に変わるとき 「地に足」実感求めた女性の物語

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   「女は三界に家なし」とはよくいったもので、いつどんな状態でも今居る場所は「仮住まい」、「地に足が付いている実感」がなく、ひいては日々がどこか他人事のように過ぎていく――そんな感覚をもつ女性は少なくないかもしれない。

   朝倉かすみ著『幸福な日々があります』(集英社、1470円)は、そんな感覚を持ちながら46歳まで生きてきた守田森子が、結婚生活10年を迎える元旦に

「いっちゃおっかなー……夫としてはたぶんもう好きじゃないんだよね」

と夫の「モーちゃん」に宣言することから動き出す物語だ。

楽しんでいた結婚生活に「気が済ん」で

『幸福な日々があります』
『幸福な日々があります』

   当然、夫は納得しないまま二人の別居生活ははじまる。物語は森子の独白で、現在と過去の回想とが交互に描かれてすすんでゆく。

   著者は1960年に北海道で生まれ、2004年『肝、焼ける』で第72回小説現代新人賞、2009年『田村はまだか』で第30回吉川英治文学新人賞を受賞した。遅いデビューながら実力派作家との触れ込み通り、本作では「女性」の浮遊感を巧みに暴き出している。

   森子は北海道の中卒の両親のもと育ち、短大卒業後は転職を繰り返していたが、夫は都内の学者一家に生まれ自身も大学教授だ。夫の「地位や安定」などが自分を高めることに喜びを感じる様子や、みずから望み、楽しんでいた結婚生活に「気が済ん」で、夫の姿が微笑ましいものから一転、苛立ちの原因にかわる落差――

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