神話、文学、SF、報道記事から科学論文までを
予測といえばまず引き合いに出される気象について万華鏡風にまとめたのが『気象を操作したいと願った人間の歴史』(ジェイムズ・ロジャー・フレミング著、紀伊國屋書店)だ。天候を人為的になんとかしようと夢見た科学者、軍人、ペテン師、詐欺師ら。「歴史的、批判的に検証した一書」と、日経で東北大の野家啓一さんが評している。
調べた事例は、神話、文学、SF、報道記事から科学論文まで。著者は、それらの多くが「行き過ぎ、うぬぼれ、自己欺瞞の悲喜劇なのだ」と釘をさす。
現代でも地球温暖化防止策として、さまざまな「地球工学」が提唱されている。が、生物への悪影響や倫理観の欠如を、本は指摘する。「暴走は地球温暖化にも増して危険」と、評者は制御すべきは気象より科学技術の傲慢さだという。なにやら経済予測にもピタリあてはまりそうな警告だ。エコノミストらがやってきた「予測」を検証したくなる。
(ジャーナリスト 高橋俊一)