なんともアンバランスな構成
開催都市再開発との関係を振り返りつつ将来論議をうながしたなどという受けとめ方ならいくらでもできるが、それにしても構成がなんともアンバランスだ。鋭角的な問題部分が不自然に少ない記述は、戦争の原因や責任論など現代史をさけて縄文・弥生ばかりを微に入り細に入り語り聞かせる中学・高校の日本史授業を思わせる。
ほかでは、五輪開催地のロンドンによせて、『英連邦』(小川浩之著、中公叢書)が読売に。旧植民地を中心にした不可解な絆。帝国支配からせっかく脱して独立した国々がなぜ?
著者は「家族の中での自立」と位置づける。繋がりを維持することが利益になると双方が考えたらしい。「そこに信頼が生まれる余地があった」と、評者の国際政治学者・細谷雄一さん。ただ、これで植民地や帝国主義が許されるわけではないだろう。この点にだけはしっかりと注意して読みたい。
(ジャーナリスト 高橋俊一)