品切れ本はふつう読めないだろうに
名人制度は1612年に徳川家康が初代名人に俸禄を与えて誕生した。明治維新後に家元制度は終焉。終身名人制から、今は実力による短期名人制へ。そうした歴史的経緯は『実録名人戦秘話』(田丸昇著、マイナビ)に。棋士の人物論としては『将棋名人血風録』(加藤一二三著、角川oneテーマ21)を小暮さんはすすめている。
日本の伝統文化については偶然、歌舞伎や落語の「襲名」関連本を朝日が読書欄のトップ記事に扱っている。京都の芸能史家による原稿だが、「読むのもいい」とあげる中に品切れ本が。先代市川猿之助(現・猿翁)の『演者の目』(朝日新聞社・品切れ)。いったいどうやって読めというのか。
研究者やよほどのファンなら国立国会図書館へ行くか、ネット上や古書街を探しまわりもするだろうが、普通の市民にそこまで求めるのは、ずれた話だ。だれを基準に紙面をつくっているのか、評者も編集者も無神経すぎる。
(ジャーナリスト 高橋俊一)