耕作放棄地、無縁墓、休眠宗教法人なども増殖中
その処方せん。著者は新築を抑えて、中古住宅を活用する政策を提言する。
これまでの住宅政策は、戦後ずっと住居不足の解消をめざしてきた。公団や自治体による公共住宅の供給や税控除による持ち家取得の促進が中心だった。さらに、近年では住宅建設が景気回復の手段にもされてきた。著者は、市場メカニズムにゆだねた住宅の稼働率向上こそ政策の柱にすべきだと主張する。
本のテーマは、住宅だけにとどまらない。増え続ける耕作放棄地、無縁墓、休眠宗教法人など。これらも撤退と再生の仕組みなし。この分析、哀しい響きの説得力がある。
これまでの政策自体が、とっくの昔にカビだらけということらしい。カビの周りにはカビから栄養を摂取する細菌に似た利権関係者が増殖し、改革に抵抗する。政界、官庁、経済界、さらに一部は地域にまで、そういう構造がすでにできている。「政策転換」のお題目だけで変わるほど、現状は甘くない。著者、評者にはそこまで考えてほしいところだ。
(ジャーナリスト 高橋俊一)