【2012年7月15日(日)の各紙から】住宅街を歩くと、よく空き家がある。何気なく通り過ぎればそれまでだが、これに日本社会の現状が投影されているという本が出た。『空き家急増の真実』(米山秀隆著、日本経済新聞出版社)が深刻化する実態と対策を示す。人がいないところでカビや細菌のようにはびこるもの……空き家のほかにもいろいろあって、早くなんとかしないといけない。
犯罪の温床、マンションでは管理組合が機能低下
「超」がつくほどの少子高齢化。日本の人口は2060年には8600万人との予想もある。住む人が減れば、使われる住宅も減る。「こうした当たり前の予測に基づき、日本の住宅政策の方向転換を提言する」本と、読売読書欄で経済学者の中島隆信さんが評している。当たり前すぎるがゆえに、なおさら深刻な問題だ。
本は、2008年の調査で約800万軒といわれる空き家のうち、入居者待ちや別荘などを除く「純粋な空き家」は270万戸に上るという。かつて親が住んでいた家に子が住まないで空き家となるケースは、その典型だろう。
書評は「周囲の住環境に悪影響を及ぼす」と学者風な、もったいぶった言い回しをしているが、要するに無住・無人の家屋が朽ち果てると犯罪の温床になりやすい。放火される危険も高まる。周囲の心配はつのるばかりだ。空き家急増のマンションは、管理組合が機能せず、スラム化する。建物としても崩壊が危惧される「限界マンション」となる。