【書評ウォッチ】五輪のあり方を考えて 人種とスポーツ、商業主義

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マーケティング、放送権料の急騰、大会の肥大化

   近年の五輪は、テレビ放送料やスポンサー企業の協賛金がふくれあがる。それは結局、商品の値段を押し上げて、消費者のふところから出ていく。引退後の身の振り方もふくめてカネを稼ぐことを意識する「気持ちプロ選手」はザラ。カネとスポーツの関係を切っても切れないところまでもってきた五輪の影響は大きい。

   この問題を扱ったのが『オリンピックと商業主義』(小川勝著、集英社新書)。第一回大会以来の五輪の収支決算を振り返る。国際オリンピック委員会(IOC)のマーケティング、放送権料の急騰、大会の肥大化なども検討する。

   今年のロンドン大会では、英国放送協会が全競技中継を計画。IOCは「アスリート・ハブ」と題した交流サイトを開設した。ボルトや北島らがIOC管理下のツイッターやフェイスブックで世界中と交流しはじめたことを玉木さんは紹介している。はたして、東京が招致をめざす2020年大会ではこれがどこまで進むのか。

   『東京オリンピック1964』(フォート・キシモト、新潮社編)は、戦争からの復興を世界にアピールした当時の写真や文章を集める。杉本苑子、三島由紀夫、北杜夫らが興奮や喜びを寄せた。

   今度、東京大会があれば「震災からの復興五輪」ということか。半世紀前と同様の「輝きや喜びにあふれた文章が並ぶだろうか?」という玉木さんの問いかけは、切実だ。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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