夏の暑い時期となると、料理をつくる気も起きず、食事はそうめん冷や麦のヘビーローテーション――なんてことを続けていると、次第にそうめんが針のように味気なく思えてくる。そんなときには、夏の麺として秋田の稲庭うどんをチョイスするのもよいかもしれない。この麺はそうめんとうどんの中間の太さであり、かつ適度な歯ごたえがあるのが、一般的な特徴とされている。
粉を練るところから完全手作業
うどんといえば近年は讃岐うどんの勢い目覚ましいが、この稲庭うどんも歴史と由緒ある存在。寛文5年(1665年)には文献で存在が確認できるという。そんな稲庭うどんのなかで、定番中の定番とされるのが「佐藤養助」のうどんだ。宗家稲庭家に伝わる稲庭うどんを二代目佐藤養助が伝授されて、開業したのが1860年。以来、一子相伝で伝わり、現在は七代目だそうだ(現在は家人以外の職人にも秘伝を伝えているという)。パッケージなどには「七代佐藤養助」とうたわれている。粉を練るところから、麺の延べ、選別まで「完全手作業」でつくられるという。
オーソドックスな麺長27センチの「稲庭干饂飩」は、百貨店やスーパーなどでもたまに見かけることがある。今回は東京・有楽町にある秋田県の物産ショップ「秋田ふるさと館」で購入(180グラム・578円)した。
「切落し」でも味は遜色なし
スパゲティを思わせる長さの麺だが、ゆでる時間がたったの3分間と、そうめん並に短いのも、火を使いたくない暑い時期にはありがたい。さっとゆでて、ざるに取り、冷せば、麺は半透明につやつやと輝き、失われていた食欲も急速によみがえる。うどんの歯ごたえはよく「シコシコ」など表現するが、このうどんは「シコ」くらいまでの歯ごたえがあってから、つるっといさぎよく喉を通り過ぎていく。そうめんより満足感があり、うどんより食べやすい。まさに暑い夏にはぴったりのうどんだ。
ちなみに佐藤養助には「切落し」(300グラム・525円、秋田ふるさと館で販売)という商品もあり、お得なので人気があるそうだ。麺の端のふぞろいな部分を集めているので、麺長約15センチと、本来の半分ほどの長さになっている。ただ元々が細いうどんなので、不揃いといっても、見た目に違いはほとんどわからない。箸で麺をすくったときに短いのは少々さびしいが、味のほうは遜色(そんしょく)なかった。
商品名:稲庭干饂飩
製造:佐藤養助商店
サイズ:180グラム
価格:578円