「ひげがなくなっておっぱいが大きくなったら連絡するように」
2010年夏、「ウナギの完全養殖」が世界で初めて達成されたが、この経緯を語る筆致には意外なユーモアがある。たとえば、人体にも作用する女性ホルモンを投与する実験で学生に「ひげがなくなっておっぱいが大きくなったら連絡するように」と注意したエピソードを紹介する。また、シラスウナギの人工生産技術については、「いまや国家機密レベルのトップシークレットなのである。特許の効力がおよばないどこかの国で勝手にまねされないため」公開できないと釘をさす。
今後の課題について「養殖において有利な、生産者や消費者に望まれる形質が期待される」と述べ、「今まさに未来の養殖への新たなスタートを切ったばかりである」と結ぶ。
完全養殖ウナギの蒲焼を口にできる未来には、本書に微笑ましく描き出される研究者たちの努力もあわせて噛み締めたい。
2012年7月2日、発売された。編著者は、虫明敬一氏。著者は、太田博巳、香川浩彦、田中秀樹、塚本克巳、廣瀬慶二の各氏。