【書評ウォッチ】多作多才の井上ひさし すごい生涯と優しいまなざし

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やさしい幽霊が気弱な人間を励ます

   戯曲や小説によく登場する幽霊や死者も、総じて優しい。穏やかな知恵を生者に与え、弱気な人間たちを励ます。『イーハトーボの劇列車』『頭痛肩こり樋口一葉』『父と暮せば』『ムサシ』などだ。

   関連作品をあげればきりはないが、異色の一冊が毎日の「COVER DESIGN」コーナーに偶然か、ポツンとある。井上が文を、安野光雅さんが絵を手がけたスウィフト原作の絵本『ガリバーの冒険』(文藝春秋)の復刊。「画中の隠れ井上ひさしを探すのも楽しい」というおすすめ本だ。

   井上ひさしは憲法擁護や、農民と米を大事にしない農政批判など社会的発言もし続けた。これも彼の一面だ。「あくまで柔らかい、ユーモアのある言葉だったが」と川本さん。あとにつづく者に思いをつなげようとして、希有な一生を走り続けた。

(ジャーナリスト 高橋俊一)

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