今なぜ、消費税なのか。増税論議が国論を2分している。書店にはたくさんの本が並び、賛成論にも反対論にも、それぞれ根拠がある。政局絡みの国会での審議とは別に、もう少し消費税について知識を深めませんか。J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/)でも特集記事を公開中。
中小零細企業に「壊滅的な打撃」
『消費税のカラクリ』
借金漬けの赤字財政を解消し、持続可能な社会保障を実現するために消費税の引き上げは不可避という増税論に対し、講談社の講談社新書『消費税のカラクリ』(著・斎藤貴男、756円)は、社会問題に鋭く切り込んできたジャーナリストの著者が「消費税アップは暴挙だ!」と真っ向から立ち向かう。
その根拠は消費税のカラクリにある。消費抑制や所得の低い人たちへの逆進性だけではない、知られざる欠陥があるという。増税分を価格に転嫁できない中小零細企業や自営業者への影響だ。5%の今でも重くのしかかり滞納額が高いのに、これ以上の負担は壊滅的な打撃を与えると警告する。中小企業が倒れれば失業者が増大、弱者はますます追いつめられる。消費税こそ、社会保障の財源に最もふさわしくない税金だという訴えである。
減税こそ経済成長への道
『所得税0で消費税「増税」が止まる世界では常識の経済学』
消費税を引き上げて税収を増やそうというのが民主党・野田政権の政策であり、自民党、公明党と交わした3党合意の基本的な考えだ。講談社の講談社+α新書『所得税0で消費税「増税」が止まる世界では常識の経済学』(著・相沢幸悦、880円)は、これとは逆の考え方に立つ。
景気が低迷しているときは、増税ではなく減税によって消費を拡大し、景気回復を図るのが本来の経済政策で、そうすれば自ずと税収増につながり、財政赤字は増えず経済は成長していく。そのためには、所得税をゼロにして、消費税を基本食料・日用品の1%程度に減税することこそ必要だと説く。たしかにデフレのいま、消費税を上げても税収は落ち込むという議論もある。だが、そのように、うまい具合に経済成長は可能なのか。
小説を読むように税金の知識を
『税金のキモが2時間でわかる本』
消費税だけでなく税金のことを一通り知っておきたいと思っても、税金の本は難しくて、と敬遠していた人にお勧めの1冊である。日本実業出版社からの『税金のキモが2時間でわかる本』(監修・安田大、1365円)は、社会人としての最低限の税金の知識が簡単に身につくという触れ込みだ。
説明文が工夫されている。英文科を出た新卒の藤本友里は経理部に配属される。初日から恥ずかしい思いをするが、部長や係長をはじめ先輩、上司らに教わりながら、確定申告や節税などひとつひとつ税金の知識を習得していく。そのプロセスがまるで軽い小説のような文章で軽快に展開する。あっという間の2時間で読み終えてみれば、知らぬ間に税金のキモが頭の中に、という仕立てである。