今年になってNHKの討論番組「新世代が解く!ニッポンのジレンマ」が話題を集めるなど、1970年代生まれの新世代論客が、次々にマスコミで取り上げられている。この世代にまた一人、強力な論客が加わることになりそうだ。1978年生まれ、34歳の倉本由香利さん。外資系コンサルティングファームで激務をこなすかたわら、独自の研究・執筆活動を精力的に行ってきた。
『グローバル・エリートの時代 個人が国家を超え、日本の未来をつくる』
その成果はブログ「My Life in MIT Sloan」(現在は「My Life After MIT Sloan」)に綴られ、高い専門性と常識にとらわれない自由な発想にあふれる言論は、多くの読者を獲得した。
そこで2年ほど前にブログに目を留めた編集者が執筆依頼をして完成したのが、講談社の新刊『グローバル・エリートの時代 個人が国家を超え、日本の未来をつくる』だ。
倉本さんは力説する。戦後、日本はグローバル化の波にさらされてきたが、それらに見事に対応してきた。第一の波は70年代の「販売のグローバル化」。これに対して日本企業は世界に製品を販売し、日本ブランドを浸透させて対応した。第二の波は80年代後半から始まった「生産のグローバル化」。この頃より、日本企業は製造拠点を海外へ移転させていく。
他人を思いやる能力
そして今起きているグローバル化の第三の波は、「組織のグローバル化」だ。
日本企業が生き残るには、海外で生まれるニーズを的確に取り込まなくてはならない。今までのように、先進国市場を熟知した日本人社員を派遣して駐留させるだけではダメ。海外の新興国の人間に意思決定を任せ、彼らを大量に雇用して、本社幹部にも登用し、活躍できるように組織を変革しなくてはならない。これが「組織のグローバル化」だ。
「組織のグローバル化」とは「個人のグローバル化」でもある。他人を思いやる能力が世界でもすぐれて高い日本人こそ、個人のグローバル化が得意のはずだ。日本企業の現場でグローバル化をリードする倉本さんだからこそ気付けた、日本人の底力が描かれている。