「母の日」、「父の日」、「音楽の日」……と、フランスでも、この季節は、記念日が目白押し。
毎年、5月最後の金曜(今年は6月最初の金曜)は「ご近所の日」。年に一度、近隣に住む人たちが集まって、親睦を深めるというのが、その主旨だ。1999年にパリ17区で始まったこのイベント、瞬く間にフランス全国に広がり、今年は700万人以上が参加したと言われる。
広場にテーブルを出し、一品持ち寄りで飲み食い
今から13年前、パリ17区の助役アタナーズ・ペリファン氏の発案で始まった「ご近所の日」。「近隣の人たちとの連帯感を高め、日常生活で助け合いができる関係を築く」ことを目的に、集合住宅の共有スペース、広場などにテーブルを出し、各々が食べ物を一品以上持ち寄り、飲み食いしながらコミュニケーションをはかる、というシンプルなイベントだ。
初年度の参加者は17区の住民1万人ほどだったのが、2011年は全国で670万人、今年2012年は700万人を超したらしい。しかも、940もの区市町村が協賛を謳うという国を挙げての大イベントに成長した。フランス人=個人主義のイメージがあるが、実は彼らは『連帯』という言葉が大好き。夜の10時まで明るく、気候のいいこの季節、戸外でワインやビールを片手におしゃべりを楽しむカジュアルなパーティ、となれば、広まらないわけがない。
「ご近所の日パーティ」を初体験
5月半ば頃、斜め裏の家のご主人から、「裏道で『ご近所の日』パーティを開くので、ぜひ参加を」をと誘われた。金曜夜より集まりやすい日曜の昼に開催する、という。実は私にとって「ご近所の日」パーティは初体験。パリの中心まで電車で30分の郊外に住んで6年、今まで周辺で「ご近所の日」パーティをやっているのを見かけた覚えがない。近所付き合いはおおむね良好で、道で会えば挨拶するし、ヴァカンス前は留守にする旨を伝えたり、庭でとれた野菜やくだものをお裾わけし合ったりしているので、あえてパーティをする必要がないのかと思っていたが、単に言い出しっぺがいなかっただけらしい。
さて、「ご近所の日」パーティは正午に始まり、車が通れないようにガードフェンスを置いた裏道で、周辺10軒くらいの家族が、大人、子ども、ティーンエイジャーまで合わせて約50人が参加した。各々キッシュ、ピザ、サラダ、サラミ、チーズなどを持参、鶏の丸焼きを持ってきた人もいたし、庭が道路に面している家は屋外用鉄板焼き機まで持ち出した。飲み物はワインにビールにジュース、デザートは手作りケーキやフルーツが並んだ。
フランス人は余興がなくてもおしゃべりだけで、十分パーティの間が持つ人種だが、この日は子どもたちが、マイケルジャクソンのダンスを披露し、何とお開きは夜の8時近くだった。もちろん、14時くらいに退散する人もいれば、16時頃、のんびりやってくる人もいる。途中、家に帰りしばらくしてまた戻って来る人もいるというフランスならではのアバウトさだ。
翌日、参加者の一人と道ですれ違ったが、挨拶する時の顔が、心なしかいつもよりにこやか。「ご近所の日」パーティは、連帯感を高める効果あり、かも。
江草由香