【書評ウォッチ】ひどいぞ「世代間格差」 問題点を整理する一冊

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【2012年6月10日(日)の各紙から】芥川龍之介の『河童』では、母親の胎内にいる子どもに、生まれる意志があるかどうかを親が尋ねる場面がある……こんな書き出しの書評が毎日に。人間の場合はもちろん、子どもは親も国も時代も選べない。少子高齢化の日本では、これからの社会を支える子どもたちの荷が重くなるばかり。その実状と原因を分析した本が『世代間格差』(加藤久和著、ちくま新書)だ。

深刻すぎる現状に解決策は?

『世代間格差』
『世代間格差』

   高齢世代よりもあとの世代になるほど負担が増える。例えば、政府の赤字財政でふくらむ借金(債務)。2011年に65歳の人は生まれた時点で1人当たり14.8万円だが、若くなるにつれて増え、2歳では722.8万円にまで拡大する。これではさまざまな制度がつづけられるはずもない。

   どうしてこんなことに? 本は、社会保障の財源として現役世代が引退世代を支える「賦課方式」をとってきたこと、終身雇用や新卒一括採用という雇用システムが行き詰ったことなど5つの要因を指摘する。

   その解決策として、債務残高が高まった場合に自動的に歳出の削減や増税などを行えるようなルール作りなどを提言している。「問題全体を展望するための恰好な一冊」と、評者の中村達也・中央大名誉教授。これを日本の政府や国会がすぐにできれば、もとからこうはならなかったろう。ただし、学者のタワゴトと片づけてすますには問題が深刻すぎる。事態を正確に知ってポイントを整理しておくために、まずは現状分析の本。サブタイトルのとおり「人口減少社会を問いなおす」必要がある。

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