中国の留学熱がいっそう高まっている。「90后」とよばれるいわゆる1990年代以降に生まれた世代の相当数が留学するという。2011年度の中国からの留学総数は約33万9700人、そのうち自費留学は31万4800人と90%以上を占めている。留学先として人気なのは米国、英国、英国、カナダ、オーストラリアで、米国が最も多い。
「アパートが欲しいか、留学したいか」
留学の低年齢化も最近の傾向であるという。中国の受験戦争は日本の比ではない。小1から帰宅後何時間もかかるような宿題の山で「教科書一冊丸暗記」というような課題さえある。放課後「補習班」とよばれる塾に通う子も多い。そこまでして中国の難関大学に入っても大学卒業生の急増のため、まともな職に就けないことも多い。厳しい中国国内での受験戦争を勝ち抜くメリットが減っていることや、子供をそういう厳しい受験環境に置きたくないという理由で留学させる例もある。
高校1年の息子をもつ中国人母に子供を留学させるのか聞いたところ、「もちろん」という答えであった。しかし、いくら中国元が強くなったといっても、私費留学は高い。ざっと見積もって米国の大学で1年間30万元(360万円)、4年間で120元(1440万円)かかるという。知人は「中流の上」の家庭で、北京市内に居住用以外の公寓(アパート)を所有しており、息子には「公寓が欲しいか、公寓を売ったお金で留学させてほしいか」選択させるという。
当の息子は、中学時代は「留学したくない」と言っていたそうだが、高校の同級生がどんどん留学するのを目の当たりにして、高校時代での留学を考え始めているという。経済的に余裕のない世帯であっても、住んでいる公寓を売って安いところに引越し、留学費用を工面する例もあるという。周りの熱に浮かされて確固とした目的なく留学する例も多いにちがいない。