【書評ウォッチ】壁の向こうの日常 中国出身作家が東ドイツ本を読む

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【2012年5月20日(日)の各紙から】人間と「国」とのかかわりを考えさせる本が2冊。それぞれ世界に広がる異空間を垣間見せてくれる。一つは『私は東ドイツに生まれた』(フランク・リースナー著、生田幸子訳、東洋書店)で、朝日読書欄で評者の中国出身作家、楊逸さんが「ベルリンの壁」の向こうにあった生活を見つめている。建国から40年で消えてしまった国の日常からは、皮肉にも、今の先進国にある問題が浮き上がってくる。

西のファッションも可、教会はたまり場に

『私は東ドイツに生まれた』
『私は東ドイツに生まれた』

   東ドイツ生まれで東西統一時に24歳だった著者は現在、日本の大学などでドイツ語を教えている。自身の体験を交え、豊富な資料や写真を用いて社会システムや宗教、政治、日常生活などについてわかりやすくつづった。

   西側への逃走を防ぐために築かれた壁の内側。そこの生活は貧しいながらも、自家用車を持つことも、かつての中国では許されなかった西側ファッションを身にまとうこともできたそうだ。

   宗教はルターの故郷だからプロテスタントと思われがちだが、カトリックとの混合で、カトリック信徒がむしろ多かった。信徒を出世させない、都市計画上邪魔だと教会を爆破するといった圧政の中で、教会はかえって人々の心休まる「たまり場」になったという。

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