漂流した人はウミガメの肉を
飼育した豚の肉を食べるという行為は、2008年公開の映画『ブタがいた教室』の設定と似ている。この映画は、大阪の小学校で新任教師がやって賛否両論を呼んだ実話にもとづく。小学生にそれをさせたことは、44歳の内澤さんの場合より衝撃的だった。東京新聞の記事はそのへんに参考程度でも触れていたら、さらに充実したはずだ。ちなみに、映画の原案は『ブタのPちゃんと32人の小学生』(黒田恭史著、ミネルヴァ書房)。
偶然にも、同紙の「3冊の本棚」コーナーに作家の椎名誠さんが「漂流記」を紹介していて、そこでは必然的に人の生存と食べ物が重要問題となっている。その中の1冊『荒海からの生還』(ドゥガル・ロバートソン著、河合伸訳、朝日新聞社)は漂流者一家が運よくウミガメを何匹も捕獲し、それを食べる話だ。ウミガメのおかげで人は誰も死なず、深刻ないさかいもなかった。意図してはいないにせよ、暗示的なページ構成になった。
(ジャーナリスト 高橋俊一)