笑わずに最後まで解けるか―中国の運転免許試験問題

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交通規則と現実とのギャップ

   問題集によると、「青信号で曲がる車両は、通行対象の直進車両、歩行者の通行を妨害してはならない」となっているが、実際に北京の道路で歩行者のために止まる車はいない。うっかり止まると、後続車にクラクションをブーブー鳴らされて早く行けとせかされる。横断歩道では、「運転手は歩行者と目が合ったら歩行者が気づいたとみなしてアクセルを踏む」から、歩行者は運転手と目を合わせないで突っ切るほうがよいのだという。

   実際、北京の歩行者は慣れたもので、赤信号であっても車が途切れれば渡るし、車の数センチ横を平気ですりぬけていく。したがって中国の運転は、対歩行者についていえば、楽といえる。歩行者のほうで、うまく車の横をすり抜けながら、縫うように交差点を渡っていく。これに慣れると、日本で運転するときに非常に危ない。横断歩道に人がいてもついつい止まるのを忘れる。帰国時に、横断歩道を渡っているおじいさんをうっかりひきそうになった……。

   日本を訪問した中国人はみな、車が歩行者のために止まってくれることに感激するし、ある知人は、渋谷ハチ公前のスクランブル交差点で、何百人もの人が赤信号で交差点にはみ出すこともなくピタッと止まっている光景をみて「すごい!」と絶句していた。日本だと、たとえ車が1台も通っていなくても、夜中で誰もみていなくても、歩行者は赤信号で止まる。個人個人が規則を遵守するというモラルの浸透が日本の交通事情を北京よりはるかにましなものにしているのだろう。中国14億人がそれに気付く日はまだ遠い。

小林真理子

【プロフィル】
小林真理子(こばやし まりこ)
北京在住3年のフリーランスライター&翻訳業。
趣味は旅行と武道。

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