【書評ウォッチ】「怪談えほん」全5冊完結 企画からの経緯に大人も納得

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   【2012年4月15日(日)の各紙から】絵本やマンガは子どもだけのものか。そんなことはない。大人が読んでも楽しめるものだって、けっこうある。宮部みゆきら人気小説家5人が恐怖や不条理を描いた岩崎書店の「怪談えほん」シリーズが出そろった。企画作りから東日本大震災をはさんで刊行までの経緯を日経がまとめた。おもしろいうえに、世相を反映している。文化部記者の署名入り記事だ。

怪談は別局面に対応するトレーニング

『悪い本』
『悪い本』

   宮部みゆき作・吉田尚令絵『悪い本』、皆川博子作・宇野亜喜良絵『マイマイとナイナイ』、京極夏彦作・町田尚子絵『いるの、いないの』など全5冊。

   昨今、絵本から怖い話が消えつつある。そういう編集者の危機感が始まりだったという。子どものころに怖い話を聞いて興奮した経験がある人は多いはずだ。現代の子どもたちからその機会を奪っていいのかどうか。

   そこで、怪談専門誌「幽」の東雅夫編集長を監修者に迎えて企画が動き出した。選んだ小説家はいずれも執筆を快諾してくれた。その原稿が届いた後に東日本大震災。震災の悲惨な映像を子どもに見せるべきか否かの議論が起きた。「怪談えほん」の刊行をためらう声も上がったが、こんな時だからこそ出そうとの結論に至ったそうだ。

   「えたいの知れないものや、従来とまったく別の現実と直面した時にどう対応するか。良質な怪談やホラーはそのトレーニングにもなる」という東氏の話を、記事は紹介している。おばけや怪異は、人の感情や人災天災が姿を変えて何ごとかを語るものという位置づけだ。そこにあしたを開くヒントがあるとすれば、聞かぬ手はない。

   刊行後、意外な方面からも反響があった。「私もやりたい」と打ち明ける絵本作家も少なくないらしい。売れ行きは上々で、第2期の刊行も決まった。いずれ、怪談が本来の立場と機能を取り戻す日も近いかもしれない。

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