【書評ウォッチ】日中の文字文化を再評価 「漢字本」が複数紙同時に

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【2012年3月25日(日)の各紙から】『漢字の魔力』(佐々木睦著、講談社、1680円)がいくつかの新聞でとり上げられた。いま日本語の魅力や文章の書き方を解説した本が静かなブームといえるぐらい注目されていて、その一端が偶然同時にスポットをあびた格好だ。経済のグローバル化や海外進出に熱を上げて「会議も記者会見も英語でやる」と宣言した企業経営者が話題をよんだのは、ほんの数年前。その主要進出先の中国で漢字が人々を強く引きつけ続ける実状を追究した一冊。ここらで日中にまたがる文字と文章の文化について考え、再評価するとよいだろう。

尖閣問題や名所のデカ文字 好奇心を刺激

『漢字の魔力』
『漢字の魔力』

   著者は中国の文学と文化史を専攻する首都大学東京准教授。この本は、漢字文化を豊富な図版入りで多方面から分析した。それだけに、読書欄の紹介や評価の仕方は新聞によってさまざまだ。

   毎日は、評者の藤森照信・工学院大教授が日中に共通した「字の力」を紹介する。尖閣諸島の無名岩礁に日中が争って名をつけた一件や、中国国内の名所に刻まれたバカデカイ文字を著者が「自然の風景と一体になって景観を作り出している……自然破壊と呼んではいけない」と説く点などは、だれでも「なぜ?」と好奇心を刺激される。ただし、「中国では字は情報ではなく、実体なのだ」というあたりは、これだけでは普通の人に分かりにくい。難解な面もやさしく解きほぐすのが書評の役割だろう。

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