クリエイティブディレクターの伊藤直樹さんが代表を務める、日本初となるアイデアオークションサイト「Mazer(マザー)」が、2012年1月9日から運用を始めている。3月21日には、オンラインではなく、学生団体「アドワール」とコラボしたリアルイベントも初開催。集まった大学生たちは伊藤氏の指導を受けながら必至の形相で「右脳」を働かせ、アイデアを捻出していた。
「普段からの訓練でいいアイデアが出る体質になる」
学生の話に耳を傾ける伊藤直樹さん
「日本でしかできない特別な体験の商品化アイデアを考えてください」
伊藤さんがチーフクリエイティブオフィサーを務める「PARTY(パーティー)」の社内スタジオ。壁に映し出された「お題」を目にした学生たちはしばし沈黙したあと、「頭に浮かんだものでいい」との指示で、渡されていた紙に何かしらのワードを書き、壁の指定されたスペースに張っていく。次に伊藤さんが「沈黙」という「お題」を提示する。今度は、先に学生たちが挙げたワードの中で、各人が気になるものと「沈黙」を掛け合わせ、「日本でしかできない特別な体験の商品化」の具体案を簡潔に紙に書いて壁に張らせた。
厳しい表情で学生らの「作品」を眺めていた伊藤さんは、「今回は一番レベルが低かった」と手厳しい。そして、「いいアイデアは大学教授だから出るというものではない。普段から訓練することによって、いいアイデアが出る体質になる」と諭すように話した。
「就活でもアイデアを生かせる!」
今回のようなワークショップは、メディアの前で実施するのは初めてだが、非公式ではこれまでも数回行っているという。おおよそ2時間。参加者らは、クリエイティブディレクターが出す「お題」をもとに1人で思考を巡らせ、ときにはグループでアイデアをひねり合う。
伊藤さんは、「今日の経験を、大学の勉強や就活に生かしてほしい。自己PRの場では、こういうアイデアがある、といったプレゼンをしたほうが、いい結果につながると思う」とアドバイス。参加した学生の1人も、「学生にとって、こういう機会はほとんどないので勉強になる」と笑顔を見せた。
「Mazer」は、この日行われたようなことがオンラインで体験できるものだ。それも、伊藤さんを始め、生駒芳子さん、原研哉さん、猪子寿之さん、スプツニ子!さん、松岡正剛さんほか、各界の著名人がクリエイティブディレクターとして参加して「お題」を与え、参加ユーザーがそれに対して考える。次いで、「投稿」があり、ベストのアイデアが決まるという流れだ。デモンストレーションでもあるリアルイベントとの決定的な違いは、最終的なアイデアを、オークションを通じて企業が購入してくれる点だろう。
「Mazer」側では、「1人でも多くの若者に、より良い日本をつくるための参加機会を提供し、企業に対しては、オープンなアイデアリソースを提供することで、企業活動を活性化すると同時に、公開性のオークションを採用することで、アイデアが無断使用されることで、アイデアが無断使用されることを未然に防ぎ、よりフェアな企業活動を行うよう働きかけていきたい」としている。