【書評ウォッチ】人間の匂いと問題意識にじむ 読売、毎日の著者インタビュー

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【2012年3月18日(日)の各紙から】

   おもしろい著者インタビューが2本、あった。毎日がとり上げた瀬畑源さんは一橋大の若手学者で、公文書の公開訴訟から役人と国民にとっての情報管理を考えた。読売では73歳の新人作家・多紀ヒカルさんの人生が浮き彫りに。どんな人がなぜ本を書いたのかを紹介する定番のコーナーだが、オーソドックスな書評とはひと味ちがう人間の匂いや問題意識がにじみ出る。

公文書保存の発想転換を求めた若手研究者

『公文書をつかう』
『公文書をつかう』

   瀬畑さんの著書は『公文書をつかう』(青弓社)。実は、宮内庁が情報公開請求を放置しているのは違法だという提訴の小さな記事が、2006年7月の朝刊に載ったことがある。国を相手取って訴えたのが、当時30歳の大学院生だった瀬畑さんその人だ。「天皇について調べるうちに、情報公開のあり方に問題があることに気がつきました」という。ここから公文書管理法制定を求める運動にかかわった。

   制定までの過程を検証した瀬畑さんは、役人に必要な文書だけを残すという明治以来の発想につきあたった。「彼らは仕事の結果は残しても、過程はあまり必要としない。でも国民はなぜそうなったかが知りたいのです」

   公文書管理法は昨年できて、間もなく1年。公務員の働き方を変えるように求めているともいえる。しかし、「枠組みはできたけれど、認識はまだ不十分です」と、瀬畑さんは現状を指摘することも忘れない。まじめで冷静な研究者の姿が、記事ににじみ出ている。

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