惨状の挿話が「山ほど」も
日々の紙面を再構成したのが『再び、立ち上がる!』(筑摩書房、1575円)だ。山間部にある病院の救助に向かった消防団員が、患者避難の最中、がれきの中に男の子の遺体を見つけた。靴にフェルトペンで名前が。しかし、どうすることもできない。小さな体に毛布をかけ、手を合わせた。こうした「挿話が山ほども」載っている。湯川氏は「中央の政治は、人びとの姿を見ているのかいないのか」と問いかける。
『3・11を超えて』(無明舎出版、1260円)は、河北新報夕刊コラムからの抜粋。励ましと慰めを盛った短文をまとめた。
朝日も「ニュースの本棚」コーナーを震災1年でまとめ、『河北新報のいちばん長い日』を含めた8冊の書評を詰めこんだ。要点をコンパクトに紹介してはいるが、どれも中途半端なもの足りなさがつきまとう。8冊すべてを、研究者でもない普通の市民が読破するのは大変だ。評者・杉田敦氏の「すでに忘却が進みつつあることをどうとらえるのか」という問題提起を、焦点をしぼって考えるにはどうしたらいいのか。少しでも実生活に即した編集をのぞみたい。
(ジャーナリスト 高橋俊一)