「税金は庶民が払う」という詐欺行為
東京新聞は、『タックスヘイブンの闇』(ニコラス・シャクソン著、藤井清美訳、朝日新聞出版、2625円)を紹介した。格差の理由は経済危機の後遺症や富裕層の株売買益などではないことを、評者の足立倫行氏がわかりやすく語る。「史上最大の詐欺行為により、世界の富は盗まれている」実態と国境を越えた資金操作システムを、この本は告発する。
それによると、問題はタックスヘイブン(租税回避地)を使った不正ビジネス。巨大な利益を上げながら、税金の極端に安いイギリス領ヴァージン諸島や税負担の軽いルクセンブルクに本社や財務部門を置き、納税を逃れる。刑法や相続税などからも解放される。富と権力を持つエリートたちは社会から便益のみを得、「税金は庶民が払う」のだという。
「何かがおかしいと世界中の人々が感じてきた。その正体を始めて暴いた衝撃的な経済ノンフィクション」とは、やや持ち上げすぎだが、グローバル経済の実態を知るには有効でタイムリーな一書だろう。
(ジャーナリスト 高橋俊一)