【2012年2月26日(日)の各紙から】
同じネット時代の「覇者」でも、優れた製品を生み出すアップルに比べてグーグルについてはいま一つ分かりにくい。その技術から経営理念、企業文化までを分析した『グーグル ネット覇者の真実』(スティーブン・レヴィ著、仲達志・池村千秋訳、阪急コミュニケーションズ、1900円)を日経が紹介している。
国領氏「21世紀型の情報文明が始まっている」
何がすごいのか、どうして2011年第3四半期だけで27億ドルも利益を上げることができるのか。ここまで巨大化したグーグルを、もう、分からないではすまされない。
製品に触れるアップルとちがって、グーグルはバーチャルな情報を扱う。実際にはそれさえ超えて「すべての情報を整理してアクセス可能にする」ことの価値、すなわちアクセス可能性を提供する企業だから理解されにくいのだと評者国領二郎氏は説明している。
製品の大量生産から拡大してきた20世紀型文明にかわって、消費者が欲しい時に欲しいものを無駄なく届ける21世紀型情報文明の始まりという位置づけだ。「そのメカニズムを理解しないものは脱落する」とも、国領氏は警告する。
この本は、膨大なインタビューに基づいて、グーグルの意思決定や設計に携わった個人の背景や考え方までをたどっていく。単なる称賛に終わらず、技術集団としての考え方と広告ビジネスモデルとの葛藤、既存の価値観や中国などにおける体制との摩擦、さらにはフェイスブックなどSNSにつきつけられた情報アクセスの新思想などの課題についても正面から取り上げる。グーグル理解への案内書と受けとめてよさそうだ。
「グーグルの成り立ちがよくわかる」「巨大なデータセンターなどを持つ設備企業であることも改めて認識させてくれる」と、国領氏の評価は高い。