地方の怨念と政府の無策 2・26事件とドラキュラと東北の今

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   【2012年2月26日(日)の各紙から】

   読書欄掲載日にあわせたのか、2・26事件を扱った読売新聞「ビタミンBook」がおもしろい。事件の原因をドラキュラと結びつけた解釈もユニーク。そこにある地方の疲弊と政府の無策を指摘する評者・片山杜秀氏の視点は、今日の東北へと最後に重なっていく。

なぜ起きた? 共通の背景から解釈

『「ドラキュラ」からブンガク』
『「ドラキュラ」からブンガク』

   2・26事件は、76年前の2月26日に陸軍の青年将校が決起して大蔵大臣らを殺した戦前日本の大動乱。結局は政府に制圧されたが、東京は一時騒然となった。

   事件がなぜ起きたのか、片山氏はイギリスの作家、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』を読むと分かると語り、その鍵を『「ドラキュラ」からブンガク』(武藤浩史著、慶応義塾大学出版会)に求める。両者に共通するのは、大飢饉と政府の対応だという。

   『ドラキュラ』の作中には、その故郷とされる東欧の街に「50年前に大火が連続して起こり」(新妻昭彦訳、水声社版)と吸血鬼出現の背景が。実は、ストーカーはアイルランド系。原作を出版した1897年の50年前に、アイルランドは大飢饉。しかし、イギリス政府は農民を減らそうと事態を放置した。人々は飢え、牛の血さえ吸ったそうだ。

   ストーカーはドラキュラを東欧人に擬しながら、アイルランド農民の怨念を代弁しているのではないかと片山氏は指摘する。吸ったのが牛ならぬロンドンっ子の血というわけだ。

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