福島原発はカフカの「城」と化した 文学で読み解く「3・11」

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被災地を「見た」人間の責任とは

   外岡氏は震災の後、いったん被災地を取材したが、今起きていることを自分で定義できず、しばらく呆然とした日々を過ごしていた。そんなとき、作家の辺見庸氏がテレビの番組で、今回の震災に関連してカミュの「ペスト」について話しているということを聞いた。その瞬間、たしかに今この国で起きていることは「ペスト」の世界であり、そこでどう生きるかが1人ひとりに問われている。そんな思いに突き動かされ、かつて読んだ名作のいくつかを再読した。

「読み直すと、それらの作品は、過去ではなく今を考える、内省の羅針盤のような力をもっていた」

   そして改めて被災地に足を運び、こう記す。

「見てしまった者は、見たことの重さを引き受け、その後も見届ける責任を負う。それが、何の力にもならないのを覚悟のうえで」

   外岡氏は朝日新聞の米国や英国の特派員を経て編集局長も務め、2011年に退社して現在はフリーのジャーナリスト。学生時代に、石川啄木をテーマにした小説「北帰行」で文芸賞を受賞している。そんな元文学青年だからこそ書けた一冊かもしれない。

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