展覧会に「100%」のキャッチフレーズがついている。何のことかと思ったら、出品作品は全てセザンヌ本人の作品、だから「セザンヌ100%」なのだそうだ。
たしかにゴッホや、ルノワールなど巨匠の大規模展では、本人よりも「同時代の画家」の作品が多いというようなことがよくある。しかし、こんどのセザンヌ展は、デッサンやスケッチ、油絵など出品約80点が全てセザンヌ本人のもの。世界8カ国の約40の美術館から集めてきたという。「過去最大級」のセザンヌ展を自負している。
交渉に苦労したと思われるが、キーマンは、監修者のドニ・クターニュ氏。セザンヌの故郷にあるグラネ美術館の元館長でフランス国家文化財主任研究官。世界のセザンヌ研究の第一人者といわれ、2006年にワシントンのナショナルギャラリーで開催されたセザンヌ展も監修した。今回も各美術館との出品交渉に大いに力を振るったのではないか。
その、クタール氏が企画した今回のテーマは「パリとプロヴァンス」。セザンヌが2つの土地を何度も行き来していたことは記録に残っていたが、今まで大きく取り上げられたことはなかった。
セザンヌは画家としての成功を夢見て、パリを訪れる。そこで当時の「前衛」であった印象派の影響を十分に受けた。そして晩年には故郷のプロヴァンスで描く。古典を踏襲しつつも新しいその作品群は、マティスやピカソ、ブラックに代表される次の時代の「前衛」への道を切り開いた。印象派の開祖モネを「モネはただ目だ」と言うセザンヌにとっては、純粋に光学的な問題はすでに後退しており、晩年は絵画的秩序の創造に向かっていたのだ。そしてその主題は、フォービズムやキュビズムに引きつがれていった。
この展覧会は、そんな通時的なセザンヌの理解に、新たな解釈を投げかけている。セザンヌは、生涯を通してパリとプロヴァンスを往復し続けた。晩年もプロヴァンスに引きこもったのではなく、パリからの訪問者も多くいた。
パリとプロヴァンスという2視点から共時的に近代絵画の父セザンヌを見てみると、パリ―プロヴァンス間の往復の意味も見えてくるはずだ。
開催期間:2012年3月28日から6月11日まで(毎週火曜日が休館。ただし5月1日は開館)
開催場所:国立新美術館 企画展示室1E
当日券:一般1500円、大学生1200円、高校生800円
前売り券:一般1300円、大学生1000円、高校生600円
団体券:一般1300円、大学生1000円、高校生600円