再認識したい、名編集者「花森安治」の個性

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【2012年2月12日(日)の各紙から】
 新聞の読書欄・書評欄を読む楽しさのひとつは、本を通じて魅力的な人物と出会えることだ。それが初対面なら何ごとも新発見だし、久々に巡りあった場合には、彼の個性や業績の再認識へとつながっていく。

津野海太郎評「日常茶飯のコトバで考えつづけた暮しの思想家」

「花森安治戯文集 1」
「花森安治戯文集 1」

今週の書評では、朝日新聞の「ニュースの本棚」コーナーに登場する花森安治さんがこれにあたる。

花森は日本を代表する編集者で、多くの人には「暮しの手帖」編集長として知られる。評者の津野海太郎氏によれば、「どんな問題についても日常茶飯のコトバで考えつづけた暮しの思想家」だ。卓抜した名文家でもあるが、著書の数は極端に少ない。戦後間もないころにでた随想集のほかは、暮しの手帖社から1971年に出版された『一戔五厘の旗』があるだけだと津野氏はいう。それが昨年・2011年の生誕100年を期して変わった。

『花森安治戯文集』(LLPブックエンド、全3巻、各2625円)の刊行が大きい。『花森安治のデザイン』(暮しの手帖社、2310円)も出され、『文芸別冊・花森安治』(河出書房新社、1260円)というムックにも文章やインタビュー記事が採録された。

戯文集は、復刻した随想に、新たに発掘されたエッセイや談話を組み合わせていて、津野氏は「かれの文業のほぼすべてが容易に通覧できる」「こんな文章も書いていたのか、という発見がいろいろある」と紹介している。

なかには、「国をまもれ」の押しつけも、火炎瓶と爆弾の革命もごめんだという晩年の姿も。「どうしても戦いたいのなら、われわれの体内に蓄積されてゆく放射能を除去するために戦え」との主張は、今の社会状況に照らすと暗示的でもある。

このほか読売と毎日が「言葉」をテーマにした書評を載せた。読売では朝吹真理子氏が『古典基礎語辞典』(大野晋編、角川学芸出版、6500円)を、3200語の語源、語誌、他の言葉との関連、解説が「充実している」と紹介。毎日では、山﨑正和氏が『言葉と脳と心』(山鳥重、講談社現代新書、777円)と『常用漢字コアイメージ辞典』(加納喜光、中央公論新社、5040円)を「言葉の根源を考えさせる二冊」としてとりあげている。(高橋俊一)

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