2012年は東京国立博物館の展覧会がすごい。2月19日まで開会中の「北京故宮展」は一時、200分待ちになった。「清明上河図」という中国の「神品」が展示されたからだ。3月20日から始まる特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」も、出品作品のレベルが極めて高い。こちらも長蛇の列になりそうだ。
フェロノサ、天心が集めた至高のコレクション
ボストン美術館はフェノロサや岡倉天心が収集に携わったこともあり、海外の美術館ではもっとも優れた日本美術のコレクションを大量に持っている。これまでもその一部がときどき公開されてきたが、今回は、いわば「総集編」。主要作品がまとめて里帰りする。
たとえば奈良時代の仏画「法華堂根本曼荼羅図」。東大寺の法華堂(三月堂)に伝わっていたが、明治期に流出した。日本に残る同時代の絵画作品は、薬師寺の吉祥天女像ぐらいしかないことからも、その重要性がわかる。このほか在外二大絵巻と知られる「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」、さらには有名な光琳の「松島図屏風」などなど。長く門外不出だった同館の「ビゲローコレクション」から、蕭白がまとめて来るほか、若冲、等伯などスーパースターの名品も目白押しだ。
美術品「輸出」が国是だった時代
約90点の出品作の大半は、日本に残っていたら、国宝あるいは重文という作品ばかり。実はフェノロサ、天心、ビゲローらは明治21年、政府が関西を中心に日本の文化財の徹底調査をしたときの中心的なメンバーで、この調査結果が後に「国宝」を決めるときの重要な判断材料になったという。当時の日本は「美術品の輸出を伸ばすことが国是となっていた時代」(堀田謹吾著「名品流転」)。貴重な文化財がフェノロサ、天心、ビゲローらが深く関わったボストン美術館に集まったのは必然だったかもしれない。同展は6月10日まで。