やっぱりAKB? ジャニーズ? 2012年の「展望」と「願望」

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『1969』
『1969』

由紀さおり&ピンク・マルティーニ
『1969
TOCT-27098
3000円
2011年10月12日発売
EMIミュージックジャパン


   昨年はAKBとジャニーズとK-POPで満タンの一年だった。実質的にはジャニーズとAKBが並び立った年だったのだが、見た目にはAKBとK-POPが並び立った印象。

   それにしても。音楽に関する情報がこれほど偏った年、というより時代は過去になかったのではないかと思う。まるで、日本にはこの3種類の音楽しかないのかと思えるほどだった。

    戦後の経済界的な表現をすれば、独禁法上のカルテル、トラストに当たりそうな勢いだ。

なにかおかしい・・・

   AKB48の曲が年間シングルチャートベスト10の上位5位までを独占するなどと、誰が予想できただろう。それもすべてがミリオンセールスなどとは! 正直言ってこれは歪んでいると思う。なにがどう歪んでいるのかはっきりと口にはできないのだが、なにかおかしい。AKB48がおかしいというのではなく、日本の音楽状況がおかしいと思えてならない。なにか北朝鮮などの完全管理下の音楽的おかしさを感じる。

   確かに過去にも突出したミュージシャン、アーティストが席巻した年、時代はあったが、それとてさまざまなタイプの音楽が並んだ上で突出している。例えばモーニング娘。の全盛期(といっても何度かあるが)である2000年を例に取れば、チャートには、サザンがいる倉木麻衣がいる、福山雅治もいる、大泉逸郎(「孫」ね!)もいる、そしてSMAPがいてモー娘。もいるのだ。

   事務所の力関係がチャートに大きく反映するという傾向は、以前から顕著だが、それでもある種のバランスは保たれていた。もちろん、AKBとその周辺、ジャニーズ事務所、K-POPという韓国勢と、それぞれのカテゴリーの中に幾つかのアーティストがいるわけで、たった三つのアーティストに席巻されているわけではもちろんない。だがそれはTOYOTAとSONYとキムチ的括りで、やはり大きな三極に席巻されていることに間違いはない。

   他のミュージシャン、アーティストが、震災復興への直接的なエールを送る曲を数多く世に送り出したが、むしろ直接的ではない「マル・マル・モリ・モリ!」のような、曲として「元気な曲」がヒットしたのも2011年の特徴かもしれない。

   昔から「メッセージ性」の強い曲は、さほど売れないという傾向があったが、結果を見ればそうなのかなというところ。

   明けて2012年。AKBは相変わらずテレビなどのメディアに出ずっぱりで、おそらく当分はそのままの勢いを維持するだろう。ジャニーズはある意味不動のブランドで、こちらも勢いは止まらない。問題はK-POP系だろうか? なにか勢いが急激に低下するようなことがありそうな気もする。

   そして、筆者が最も注目するのが、2011年の由紀さおりの身に起きた出来事。海外からの引き合いで、過去の楽曲が世界的な評価を得たこと。この流れが幾つかの日本のアーティスト再評価というトピックを生むのではないかと思う。正直なところ、どうかな?というのもあるが、バランスの崩れた音楽シーンというのは、なにか不健全な印象がぬぐえない。そうあって欲しいという願望も込めて。

加藤 晋

   【収録曲】

1. ブルー・ライト・ヨコハマ
2. 真夜中のボサ・ノバ
3. さらば夏の日
4. パフ
5. いいじゃないの幸せならば
6. 夕月
7. 夜明けのスキャット
8. マシュ・ケ・ナダ
9. イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?
10. 私もあなたと泣いていい?
11. わすれたいのに
12. 季節の足音 (ボーナス・トラック)

◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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