報道されなかった「遺体安置所」の現実 ノンフィクション作家・石井光太らが釜石市でトークイベント開催

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   東日本大震災から10か月以上が経過した。住民4万人のうち1100人以上の死者・行方不明者の犠牲が出た岩手県釜石市では、いまもなお行方不明者の遺体捜索が行われている。その釜石の遺体安置所を基点にして、膨大な死とそれに直面する人々の取材を重ねて書き上げたルポルタージュ『遺体 ―震災、津波の果てに』(新潮社)の著者でノンフィクション作家の石井光太さん(34)が、2012年1月14日に岩手県釜石市の青葉公園商店街、復興ハウスでトークイベントを行った。

「神も仏もないのか…」

トークイベントに参加した(左から)千葉淳さん、芝崎惠應さん、石井光太さん
トークイベントに参加した(左から)千葉淳さん、芝崎惠應さん、石井光太さん

   イベントでは、石井光太さんがナビゲート役となり、野田武則釜石市長の他に、同書に登場する仙寿院僧侶の芝崎惠應さん(55)や民生委員の千葉淳さん(71)らが登壇。甚大な被害を受けた釜石市の遺体安置所をめぐって、ご遺体のため、そして遺族のために、ひたすら奔走してきた当事者たちが個人的な体験や想いを語った。

   僧侶の芝崎さんは、目の前でおばあさんが助けを求めて手を振りながら津波に流されるのを黙って見ているしかないという経験をしたという。「その様子を見ていた近所の男性が『神も仏もないのか』と横でつぶやいた時、返事をすることができませんでした。僧侶として本当は言ってはいけないことですが、まさしくその通りだと思ってしまった。人間は非常に無力で、無情を感じました」と当時の状況を振り返った。

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