「北京故宮博物院200選」が2012年1月2日から東京国立博物館で始まる。長期の交渉によって、ようやく実現したというだけあって、過去の故宮展をはるかに超えるきわめて充実した内容となっている。これまで「門外不出」とされてきた名品が大量に出品されており、「北京故宮展の決定版」という。
「中国が誇る至宝」「世界屈指の名画」
最大の目玉は「清明上河図」だ。ほとんどの日本人にとっては「何、それっ?」かもしれないが、東京国立博物館によると、「中国の誇る至宝であり、世界屈指の名画」とされる。中国の国宝に相当する「1級文物」の中でも特別のランクにあり、「神品」といわれている。今世紀に入ってから5回しか公開されておらず、北京でもめったに見ることが出来ない秘蔵品だ。もちろん国外で展示されるのは初めてという。
縦約25センチ、長さ528センチの絹本絵巻に、北宋(960~1127)時代の後期に都・開封とその郊外で暮らす人々の様子が丹念に描かれている。登場人物は約800人、馬車やラクダなどもいる。ブリューゲルよりも数百年前に、アジアで同じような「生活風俗画」が描かれていたことに驚く。作者は張択端とされている。
当時の家並みや街のにぎわい、人々の暮らしぶりがあまりに克明に生き生きと再現されているので、眺めていると12世紀にタイムスリップしてしまいそうになる。この土地にむかし住んでいた人はこんな生活ぶりだったのかということが、リアルに体感できて懐かしい。中国でもっとも「愛されている絵画」といわれる理由もそのあたりにありそうだ。明時代には盛んに模本が作られ、後世の中国美術に大きな影響を与えてきた。
2010年の上海博覧会では、この作品を現代のデジタル技術で約30倍に拡大した、長さ128メートルの巨大パノラマが展示され大人気だった。登場人物が動くアニメーションになっていたので、さらに面白みが増して約80万人が来場したそうだ。その様子はYouTubeで検索すると、見ることが出来る。