実業之日本社から2011年11月17日に発売された新刊本『乙女の美術史 日本編』(著/堀江宏樹、著/滝乃みわこ)が好評だ。
"セクシー担当"として「脱いだ」弁財天
日本人になじみ深い仏像や寺、浮世絵師らにまつわる隠れたエピソードを「乙女の目線」で紹介した異色本だ。
まず、第一章「古代・中世」で目を引くのが吉祥天と江ノ島弁財天のくだり。「七福神」の紅一点は「弁財天」となっているが、もともとは吉祥天で、「七福神」メンバーNo.1のイケメン「毘沙門天」と結婚していたのだという。格からいえば断然、吉祥天が上だったが、弁財天はこともあろうに吉祥天のダンナである毘沙門天を寝取り、吉祥天から「七福神」の一角を奪ってしまったのだ。また、弁財天には"セクシー担当"として「脱いだ」証拠もあり・・・。
「歌麿美人」登場は「寛政の改革」のお陰?
もう一つ紹介するならば、浮世絵師・喜多川歌麿のエピソードも面白い。もともと歌麿はちょいぽちゃ美人が好みだったが、当時、遊女や芸者ら「くろうと」女性たちはこぞってスマート体形を目指していた。描きたい理想の女性をなかなか書けずにいたところ、「版元」として歌麿とコンビを組んでいた蔦谷重三郎が「寛政の改革」の影響でエンタメ系作品の出版を禁じられる。だが、2人は黙っておとなしくはしていない。女性の「大首絵(顔のアップの絵)」に新境地をみいだし、のちに「歌麿美人」といわれる「ちょいぽちゃ美人」を数多く登場させるのだった。切手で有名な「ビードロを吹く女」を思い出せば、「ああ・・・」と納得されるだろう。
ほかにも、雪舟や菱川師宣、鈴木春信、横山大観、黒田清輝、竹久夢二など、多くのアーティストたちのクスっと笑えるエピソードが満載だ。
単行本、224ページ。定価1470円。