北朝鮮の最高指導者・金正日総書記の死去が、2011年12月19日明らかにされた。改めて「近くて遠い」かの国への関心が高まる中、北朝鮮を取り上げた書籍に大きな注目が集まっている。(J-CASTニュースの新書籍サイト「BOOKウォッチ」(https://books.j-cast.com/でも特集記事を公開中)
門外不出の朝鮮学校「歴史教科書」
祥伝社では2011年11月8日、『朝鮮学校「歴史教科書」を読む』(著・萩原遼、井沢元彦、定価819円)を発売した。
日本の朝鮮学校でどのような教育が行われているかは、ほとんど明らかにされていない。本著では元「赤旗」平壌特派員である萩原氏が入手した門外不出とされるその「歴史教科書」を、歴史家である井沢氏とともに内容を検証している。
2人の対話からは朝鮮学校で「歴史」として教えられているものが、まさに「金日成神話」にほかならないことが明らかにされる。荒唐無稽なプロパガンダが事実として語られる一方で、「朝鮮戦争」「大韓航空機爆破事件」「日本人拉致事件」といった都合の悪い問題はねじ曲げられて伝えられており、北朝鮮という国のあり方を改めてうかがい知ることができる。
北朝鮮の「売春」、そして「合コン」事情
同じく祥伝社から出版されている『実録 北朝鮮の色と欲』(著・尹雄、訳・韓良心、定価570円)は、売春から中絶、結婚、さらには「合コン」などといった北朝鮮の「色欲」事情を紹介した一冊だ。
著者は北朝鮮からの亡命者であり、その語りからは一般の報道からはなかなか見えてこない「人民」たちの生々しい事情が伝わってくる。「花売り娘」に身を落とした同級生との再会、闇で流通するポルノビデオ、就職のため大学幹部に体を許した女子学生の告発――など、「地上の楽園」という理念とは程遠い実態が次々と明らかにされる。
それにしても「色と欲」といえば、これからあの「喜び組」はどこに行くのだろうか? 気になるところだ。
「独裁政権を倒し、拉致被害者を奪回せよ!」
毛色の変わったところで、柏艪舎から出版された『高句麗の十字架』(著・藤原和博、定価1785円)は北朝鮮を舞台としたスパイ小説だ。
北朝鮮に取り残された「拉致被害者たち」の奪還を目指す男たちと、「独裁体制打倒」を志す一団。2つの運命の糸が交わったとき、何が起こるか――工作員の水死体、家族の行方を追う実業家、抗日戦線の元闘士、そして古代「高句麗」の古墳など、次々と登場する謎に、読者はぐいぐい引き込まれていく。単なる絵空事に留まらない「歴史予言小説」という観点から描かれていることもあり、金総書記死後の北朝鮮情勢、そして拉致問題の今後についても深く考えるきっかけになりそうだ。
「世界最悪の独裁者を撮った初の日本人」とは
最期まで秘密のベールに包まれていた「金正日」であったが、その正体にギリギリまで迫った日本人がいた。「不肖・宮嶋」としておなじみのジャーナリスト、宮嶋茂樹氏だ。文藝春秋から出ている『不肖・宮嶋 金正日を狙え!』(著・宮嶋茂樹、定価680円)では、その一部始終が語られる。
金総書記がロシアを訪問する――2001年と2002年、そんな情報を掴んだ宮嶋氏はカメラ片手に北の大地へと乗り込んだ。目的はただ一つ、「金正日」の真実の姿をカメラに捉えることだ。ロシアの特殊部隊や北朝鮮のSPたちも、「世界最悪の独裁者を撮った初の日本人」の栄誉に燃える宮嶋氏はものともしない。アマゾンのレビューには、「改めてプロカメラマンの凄さを感じた」「スナイパーに狙われながら標的を捕らえようとする場面では、まるで自分がそこにいるかのような極度の緊張感が味わえます」など、その執念に驚くコメントが多数寄せられている。
と同時に本著の魅力となっているのは、宮嶋節で活写される勝手気ままな「将軍サマ」の姿だ。あの風体を二度と見られないのは、少し寂しい感じもする。