「独裁政権を倒し、拉致被害者を奪回せよ!」
毛色の変わったところで、柏艪舎から出版された『高句麗の十字架』(著・藤原和博、定価1785円)は北朝鮮を舞台としたスパイ小説だ。
北朝鮮に取り残された「拉致被害者たち」の奪還を目指す男たちと、「独裁体制打倒」を志す一団。2つの運命の糸が交わったとき、何が起こるか――工作員の水死体、家族の行方を追う実業家、抗日戦線の元闘士、そして古代「高句麗」の古墳など、次々と登場する謎に、読者はぐいぐい引き込まれていく。単なる絵空事に留まらない「歴史予言小説」という観点から描かれていることもあり、金総書記死後の北朝鮮情勢、そして拉致問題の今後についても深く考えるきっかけになりそうだ。