2011年は改めて「家族の絆」が見直された1年となった。お互いのつながりの大切さを実感した一方で、日常を考えると親は仕事、子どもは学校で忙しく、なかなか一家全員集まって話す時間が取れないのが現実だろう。
その解消法のひとつに、週末や休暇でのドライブがある。家族だけの車中なら、ざっくばらんに話しやすい。車で旅行に向かう際には、「意外」なアイテムが家族のコミュニケーションに一役買っているようだ。
カーナビに「楽しさ」を追求
東京・足立区に住む男性会社員(42)は、妻と2人の子どもの4人でよく一緒に車で出かけると話す。遅くまで会社で仕事という日々で、家に着くと子どもたちは既に布団の中だ。「平日、家族全員そろって話せる時間は皆無」というだけに週末のドライブは、貴重な家族間のコミュニケーションの場になるのだ。
カーナビゲーションアプリの企画・開発を手がけるキャンバスマップルが小、中学生の子どもを持つ30~40代の男女を対象に実施した調査によると、日常の家族団らんが足りないと感じている回答者は58.6%に達する一方、団らんを増やすための休日の過ごし方として「車で出かけたい」が88.7%と圧倒的だった。車内は家族だけの空間となるので、普段は子どもに聞かないような学校や友達の話や、進路や将来の夢といった話題も出るようだ。
ドライブは長年、余暇の過ごし方として定着してきたが、そのスタイルは変化を見せている。昔はロードマップとにらめっこをしながら慣れない道を運転していた人も、今日ではカーナビを頼りにスムーズに車を走らせるのが一般的だ。従来のカーナビは、ある地点から別の地点に移動する際の道順を探すツールとのイメージが強いが、これに全国の観光地の詳細情報を加え、「観光ガイド」の役割を色濃くしたものが、キャンバスマップルが開発したカーナビアプリ「マップルナビ3」だ。
自分で文字を入力、検索するのではなく、カーナビ側から「おすすめの観光地」を提案してくれる。大ざっぱに「ここに行きたい」と地域を選ぶと、周辺の観光スポットやレストランなどの写真付きの解説が表示されるつくりだ。開発を指揮した山本幸裕社長は、「家族のおでかけはワクワクするもの。そこでカーナビも、単なる装置ではなく『楽しさ』を追求しようとの発想からスタートしました」と明かす。