北京では社会人になりたての若者で所得が低い層は、アパートに数人で同居したり農村部の一軒家に大勢で住んだりする場合が多い。かなり劣悪な環境のこともあるようで、そんな彼らは「蟻族」と呼ばれる。専用の浴室やトイレはなく、共同シャワーは料金がかかる。節約のためシャワーは夏は3日に一度、冬は寒さもあるし汗もかかないことから週1回程度……らしい。北京の気候はヨーロッパ同様乾燥しているから、毎日シャワーをしなくてもよいという考えだろうが、冬場に北京のラッシュアワーに地下鉄に乗ると、大勢の体臭、髪の臭いが入り混じったむっとした臭いに包まれることもままある。
ふたを開けると薬草の強力な臭い
そんな中国でも若い女性はおしゃれに敏感であるし、大卒以上の高学歴者の就職難で、面接での外見を重要と考える若者も増えている。China Daily紙でも「外見が最も重要な特長ではないが、もし同レベルの候補者が比べられたら、外見がよいほうが選ばれる」とコメントしている。フケだらけの髪では職も見つからないだろう。就職試験前にプチ整形を受ける人も多いという。
数年前までは手に入るシャンプーの選択肢が少なかったが、ここ1,2年ヘアケア製品の宣伝が目につくようになり。スーパーやドラッグストアでも日本や欧米ブランドのシャンプーが並んでいる。新聞に掲載されたある統計データによると、中国人の20%は毎日髪を洗い75%は3日に1度洗うという。この数字を多いとみるか少ないとみるかはともかく、シャンプーの市場規模は中国で300億元、ヘアケア製品は200億元だという。
シャンプーでは、うるおいを与える、フケを防ぐ、まっすぐな髪にするなど、特別な性能を謳った製品も受け入れられているという。優勢なのは中国国内ブランドより海外ブランドで、シェア1位はP&Gで市場の55%、次はUnileverとのこと。日本のS社の製品などもドラッグストアやスーパーでも目立つ位置に置かれている。
しかし日本人駐在員奥様方にひそかに人気なのは、覇王印のシャンプーである。人づてに聞いて、試してみたところ、キャップをあけてけたとたん、強烈な薬草の臭いが鼻をついた。日本のシャンプーのさわやかな草花系の香りと対極にあるというか、すでにシャンプーの臭いではない。中国4千年、漢方の秘薬か!と思わせる。すごい臭いなのだが「これなら絶対効くに違いない」と思わせる説得力がある。シャンプー界の青汁というところか。