【バンコク発】農作物被害に交通機関断絶 バンコクで深刻さ増す食料不足

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   現在、タイでは各地で洪水が発生し、政府による必死の対応が行われています。日系企業が多く進出している中部アユタヤ県のサハラタナナコン工業団地、ロジャナ工業団地、バンワー工業団地、バンパイン工業団地など、多くの工業団地の浸水により、日本をはじめ世界経済への影響が懸念されています。

歴史的大洪水の原因とは?

バンコクポストによる洪水被害予想地図
バンコクポストによる洪水被害予想地図

洪水対策のために防御壁を準備(バンコク、プロンポン)
洪水対策のために防御壁を準備(バンコク、プロンポン)

   今回の洪水の原因の一つとされているのが、例年をはるかに超える降水量。今年はラニーニャ現象の影響で台風が例年より多く発生し、これら台風の影響で北部や東北部では今年6月から9月までの月間降雨量が平均月より最大で50%も上回りました。8月からチャオプラヤー川の上流で浸水が広がり、9月には中部に、10月下旬から下流のアユタヤへと洪水が広がり、現在バンコクに到達しようとしています。

   その他の原因として挙げられているのがダムの管理体制です。昨年タイは水不足で、雨期に入った今年の5月以降も北部や中部ではまとまった雨が降らず、国内のダムの貯水率が落ち込んでいました。水不足解消のため、北部ターク県のプミポンダムなどいくつかのダムでは貯水量が上がっても水をため込んでいたのですがその後、台風の影響で大雨が続き、水量が予想を越えて急激に増加。ダム決壊の恐れが出てきたため大量の水を一度に放流する事態になってしまったと言われています。

懸念される二次的災害

スーパーからも食料品が消える(バンコク、オンヌットの大型スーパー)
スーパーからも食料品が消える(バンコク、オンヌットの大型スーパー)

   チャオプラヤー川は起伏に乏しい大きな河口域を持っており、アユタヤやバンコクなどの下流域はほとんど平らな低地が続いているため、いったん水があふれると、収まるまでにとても時間がかかると見られています。また中央大学の分析では、既に浸水している水の量は、琵琶湖の水量を上回るおよそ300億トンに達しており、今後、雨があまり降らなくても洪水はしばらく収まらないと指摘されています。

   バンコク都心部のピークとされているのが、10月28日の満潮時です。タイ政府は大潮による被害が予想される27日から31日までの5日間、バンコクと20の県にある学校や政府機関を休みにすることを決定しました。

   また、現在バンコクで深刻さを増してきているのが、食糧不足です。10月半ばから、スーパーでは水や保存可能な食料品などの品切れ状態が続いており、関税がかかりタイのミネラルウォーターの3倍近くする海外のミネラルフォーターまでもが入手困難な状況が続いています。農作物への被害や交通機関の断絶など、食糧不足は今後も長引きそうです。

   私は東日本大震災の時期に東京で暮らしていたのですが、今のバンコクは、それに近い雰囲気を感じます。この被害がいつまで続くのかという不透明な状態により、社会的な空気も自粛ムードに傾いています。

   日本政府は、日本企業のタイ人労働者の就労を容認するなど、支援を広げているようです。タイで暮らしている一人として、少しでもタイの役に立てるように行動していきたいと感じています。

美濃羽佐智子

美濃羽佐智子(みのわ・さちこ)出版社の編集を経てフリーの編集・ライターに。旅・フード・ファッションをフィールドに活動する。現在はタイと日本を往復しながら、タイの面白いこと、美味しいことをさまざまなメディアに寄稿中。
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